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上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ」に登場するバルサとタンダ [守り人シリーズ]

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バルサとタンダに見る現代カップル
上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ」に登場する
バルサとタンダ。女用心棒として各地を巡り戦ってばかりの肝っ玉母さん的バルサ(30)。

薬草師兼呪術師見習い?でバルサの幼なじみのタンダ(27~28)。
第一作目「精霊の守り人」の段階から、皇子(最終的には皇太子となる)チャグムに
「結婚しないの?」(こんな言い方はしていませんが。)と言われ、
じれった~い感じのやりとりが散りばめられていました。

その後の作品でも随所にお互いを思いやるシーンがありますが、この二人の関係性が
現代のカップル事情と重なるところが多いような気がしてならないのです。


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最近のドラマでもこのような設定、展開が増えてきたなーと感じるのは私だけでしょうか?
設定①年上彼女に年下彼氏
設定②バリバリのキャリアウーマンと主夫的男子
設定③素直に女性らしく振る舞えない女性と、それを見守るor支えるor振り回される男性

さまざま世に出てきたドラマ「アラウンドフォーティ」や「曲げられない女」などなど…
こまかい設定やあらすじに差違はあれど、なんとなく似ている気がしませんか?

上橋菜穂子さん既に現代の恋愛事情を的確にとらえてしまっているところがオソロシイ……?!
と感じてしまうのです。社会的にもぐいぐい進出してきた女性たち。

自分の能力で道を切り開いて、自分らしく生きていく女性たちは身体的に…というより
精神的にバルサ並みに強いと思うんです。

縛られることを好まず、外に出てどんどん自分の力を試すために闘うカッコいい女性
増えました。でも男性はやっぱり、女性に家にいてほしいと思う…というか、男性が
女性的になってきている?(という表現が正しいのかは知りませんが。)感も否めません。


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守り人シリーズ」では、どう見ても(読んでも?)、タンダがバルサを待っている状況が多いです。
もう昔のような「君待つと…」的な女性が男性を待つ時代ではもちろんないのが、
バルサとタンダの間にも確率しているのが面白みのひとつですよね。

しかもバルサの方が年上。タンダからは幾度となく結婚を仄めかされているというのに
ごめーん、やっぱ次の旅でるねー」てふらっといなくなるバルサ(笑)最終的には
結婚して落ち着くことにはなるけれど、果たして数年後にどういう展開に
なっているのかが気になります。

私個人の想像としては、女の子ができて、しかもバルサみたいに気も腕っぷしも
強い女の子で、「あたしもお母さんみたいに女用心棒になる!」とか言い出す始末
、お父さんひとりタジタジ…という流れがものすごくオモシロイのですが。
さて、どうなることやら。


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上橋菜穂子さん守り人シリーズ第三弾「夢の守り人」の感想 [守り人シリーズ]

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上橋菜穂子さん守り人シリーズ第三弾「夢の守り人」この作品ではタンダが大活躍です!
第一作目「精霊の守り人」では、正直なところタンダのイメージを
「優男」「草食系」「インドア系」のように持った読者、決して私だけではないと思います。

バルサが女だてらにあれだけ腕っぷしが強くてカッコいい武人キャラなのに対して、
タンダは年下だし、薬草師とかぱっとしないポストだし
(現在の薬剤師の方々に失礼になったら申し訳ありません。)

バルサのセリフにも「武道はからっきしだったよね」と言われる有り様だし……
と軽く見ていたのですが、今回のタンダは生き生きしてます!


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何十年に一度咲くというナユグ(異次元世界のようなもの)の花が、開花に際して
人を眠りに誘うらしい…しかし、花の夢に誘われた人々は皆、心に何か闇を抱え、
現実世界からの逃避願望のために花の夢に誘われやすくなってしまうのです。

この話ではチャグムや、チャグムの亡くなった兄皇子サグムの母親である一ノ妃や、
タンダの姪のカヤなど何人かの重要人物が花の夢にとらわれて、まるで
魂の脱け殻のようになってしまいます。

それを助けようとタンダが呪術を使って夢の中に入っていくのですが、
それは危険な行為でした。花の夢にとらわれて人々を助けた代わりに
タンダが花にとらわれて「花守り」となってしまうのです。


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花の夢の中で「花守り」となったものは、現実世界では「人鬼」となり、
もはや今までの記憶や人らしい感情は一切なくなってしまうのです。

自分の身に起こることが分かっているタンダは、バルサに「し自分が完全に 人鬼となってしまったら、躊躇わずに殺してほしい」と頼みます。

それに対してバルサが出した答えとは……
この作品のイチオシは、バルサが
究極の選択を迫られた時にタンダへの想いがいかなるものなのかが、やっと
上橋菜穂子さん守り人シリーズ三作品目にして分かるところでしょう。

一作目も二作目も、なんとなく好きなんだろな~と匂わせつつも、それよりも
強烈な冒険や陰謀の物語の方に意識が行ってしまう作りになっていました。
上橋菜穂子さんの作品の中では珍しくロマンティックな風潮があふれる作品です。


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上橋菜穂子さんの守り人シリーズ第二弾「闇の守り人」の感想 [守り人シリーズ]

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上橋菜穂子さん守り人シリーズ第二弾「闇の守り人」この作品は、
上橋さんご自身「子供よりも大人からの人気が高い」と言っておられます。

タイトルに「」と名がつくように、この作品にはさまざまな闇が登場します。
物理的な闇から、人の心抱える闇まで…人って、成長するにつれてさまざまな
闇に対面せざるを得ないじゃないですか。

しかも、大人になればなるほど、また、闇に多く触れれば触れるほど
闇が闇を呼ぶように重なっていくものです。
中には、どんな困難の中でも、本当にあっかるくて闇の部分を見せない人もいますけど、
そういう達観された人ってなかなかいないものです。

多くの人が己の闇に苦しみ、闇の原因と対峙しては悩み、ついついそれが表に出てしまう…。
己の闇と向き合うという事は簡単なことでは決してありません。
ましてその闇を本当の意味で克服しようとするのは大変な事なのです。


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この第二作目「闇の守り人」は、女用心棒バルサが自分の過去を清算するために
故郷に戻る旅のお話です。清算というと少し違和感はありますが、自分の過去・昔の傷を
見つめ直す旅のお話です。バルサは、幼い頃に王国の陰謀に巻き込まれて父を暗殺されてしまいます。

バルサのお父さんは賢い人だったので、自分が殺されることを見越して、親友の
短槍使いの武人にバルサを託して逃げてもらうよう頼みます。しかし、そこからの逃亡生活もなま
易しい道ではありませんでした。

王国からの追っ手が次々とかかります。父の親友・バルサの育て親となったジグロは、
バルサを守るために追っ手として立ち向かうかつての自分の友人たちを 殺さなくてはならない運命になります。

ジグロからすれば、「自分の実の娘でもないのに、親友の頼みでここまでしなければ ならなくなってしまった」という怨みの念がまったくなかったと言えば嘘になるでしょう。


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バルサにしても、「大人の汚い企みに巻き込まれただけなのに、父も奪われ 命を狙われる毎日を過ごさなければならなくなってしまった」という憤りと、
「本当の父でもないジグロに自分の身の安全を任せてしまっている」事への
罪悪感に苛まれることになります。

人と人とが関わり合いながら生きている私たちは、楽しい事や嬉しい事しか
起きないうちはそれらを共有する事はとても喜ばしい事です。
が、苦しい事や辛い事が起きると、共有し支え合う事が大切だと分かっていても、
苦しみ自体に耐えきれず「誰かのせい」にしたくなってしまうことがあります。

天災だろうと人災だろうと、苦しみに耐えきれなくなりそうになると、だんだんと
「自分以外の原因」を作り出してしまいます。
例えばそれがいつも一緒にいて自分を支えてくれている相手でも。
最初は分かっているのです。「これは仕方のなかった事なんだ」と。

でも、悲しみや苦しみは次第に怒りや憎しみに変わります。その矛先がそばにいる人への
八つ当たりに変わるのです。「こうしてくれれば良かったのに
こんなことしなければ、もっとマシだったのに」…事が進めば進むほど、
いろいろな事象が絡み合い、もはや何が原因だったのか分からなくなるほど
複雑になること、ありませんか?


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そして、更に進むと「自分に巻き込まなければ良かったのに」「自分と関わらせてしまった」と
矛先が自分に向いて自責の念にかられたり……でもまた時がたつと、矛先はまた
相手に向いたり……人間てこんなこと繰り返して生きていたりしますよね。

大きく構えて受け止めるためにはどうしたら良いんでしょうね。長く生きれば生きるほど、
物事は複雑に絡み合っていきます。大人は悩み哀しみが澱(おり)のように
溜まっていくことを避けられません。
だから、この作品は大人に人気があるのでしょう。

一作目のように、幼いチャグムが、これから待ち受ける困難・しかも人生初の試練に
立ち向かって成長していく…という単純でピュアな話じゃないんです。

とうの昔に「どうにもならなかった」と過ぎ去ってしまった苦しい過去、諦めて
目をつぶっていた過去を掘り起こして受け止める話です。
過去を白紙に戻すことはできません。なかった事になんかできないんです。

その過去から何を学ぶか。他の誰かに何を残すか。それを考え出して初めて、
過去を活かせると言えるのではないでしょうか。


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上橋菜穂子さんの守り人シリーズ第一弾「精霊の守り人」感想 [守り人シリーズ]

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上橋菜穂子さん守り人シリーズ第一弾「精霊の守り人」を読んだ感想です。
「短槍使いのバルサ」が、精霊の卵を産みつけられ精霊の守り人となった皇子チャグム
守り旅をしていく第一作目。

物語の大きな骨組みとしては、チャグムの身体と心の成長に
スポットライトがあたっていると私は思います。

今まで「皇子」として守られる生活を送ってきたチャグムが、守られて
当たり前だった自分の生き方を見つめ直すシーンが最後に出てきます。

事の発端は精霊の卵を産みつけられた事によって様々な不思議が起こります。
それにより帝から命を狙われ、宮を終われる羽目になってしまいます。


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わが子をなんとか守りたいと思った后がバルサに用心棒を頼むことから旅は始まります。
実はチャグムが背負うことになったこの運命はただの不思議ではなく、国全体を
ひいてはこの世界の歴史を担う出来事でした。

旅を続けるうちに真相を知っていくチャグムは次第にこう考えます。
なんで自分が?」「なんで自分だけがこんな目に合わなきゃいけないんだ?
自分が望んだわけじゃないのにどうして?」と。

そして物語の中では、その答えの出ない不安・恐怖・憤りをバルサにぶつける場面があります。
バルサはそれを受け止め、若かりし頃の自分と重ね合わせることで、今までの
そしてこれからの生き方を見つめ直し、物語の最後にまた新たな旅に出ることを決心し、
次回作へとつながっていきます。

これは翻って見てみると、私たちの人生の中でも起こっていることなのではないでしょうか。
人生の中には、自分の力ではどうしようもない事が身の上に降りかかってくる事があります。
自分が望んだわけでもない苦しみや悲しみが襲ってくる事があります。


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現代(ここでは昭和50年代以降に生まれた人たちを指します)に生きる私たちはいわゆる、
物があふれ、戦争や貧困とは無縁の「恵まれた世代」だとは思っています。

チャグムやバルサたちの経験する冒険のような苦労をすることはまずありません。
が、その時代その時代の中で生き残っていく厳しさは変わっていないと考えています。

命そのものを脅かされる事がなくとも、精神を脅かされる事が増えたりしています。
昔より今の方が楽でいい…とか、今より昔の方が楽だった…などという分け方を
しているわけではない事はご承知置きください。

話を戻します。「なんで自分がこんな目に?」と自分だけが大変な運命を
背負わされた気になることは、人間ならば誰しもが思ったことはあるのではないでしょうか?


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物語の中のチャグムのように周囲の人に当たり散らしたくなったり、どうにもならない
運命を嘆いてみたくなったり、あるいはそんな運命に自棄になったり………。

でも、結局は自分の力でなんとかするしかないのです。突き詰めたとて「独りぼっちの戦い
ではなくとも、自分で運命の流れを変えていくしかないのです。

大きな流れを変えることは容易なことではありません。それでもなんとか少しずつ、
川の本流から枝分かれさせて支流へと流すように、自分の思うように持っていくしかないのです。

だから、この一作目の基本のテーマ元素は「」なのです。チャグムが産みつけられた
精神の卵は「水の守り手」と呼ばれるものです。
この物語は、単なるバルサとチャグムの
アドベンチャーストーリーではありません。私たち人間が生きていく上で
立ち向かわなければならない壁との向き合い方を考えさせてくれます。

そして、運命に翻弄されもがき苦しんで成長していくチャグムを見たバルサがありし日の
自分に立ち返って旅に出るように、いくつになっても巡ってくる困難に打ち克てるように
私たちの背中を押してくれるのです。
だからこそ、アニメ化されドラマ化され人気が出たのだと、私は思います。


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獣の奏者を読んでみての感想 [感想]

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最近、「鹿の王」で本屋大賞を取ったことで有名な上橋菜穂子さん。
恥ずかしながら、私はこの本が大賞を取ったことで、著者の存在を知りました。

とはいうものの、作品自体はアニメ化などもされていて、タイトルだけは
知っているものもあったのですが。

その中から選んで読んでみたのが「獣の奏者」全4巻。
外伝を含めれば全5巻なのですが、ここでは一続きの物語ということで
全4巻というくくりにしたいと思います。


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読了してまず感嘆したのは、主人公のほぼ一生を描き切ってみせた
上橋菜穂子さんの根気と、そして愛情でした。

1人1人の登場人物への愛情が文章の合間合間から感じられて、ああこの人は
エリン(主人公)たちと共にこの広大な小説の世界で
生きているのだと感じさせてくれました。

ファンタジー系は以前から好んで読んでいて、有名なところですと
ハリーポッターシリーズや、宮部みゆきさんの「ブレイブストーリー」などを
これまで読んでいます。そんな中でも、この「獣の奏者」という作品は
少し毛色が違う物語なのかな、とも感じました。


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著者が童話作家ということもあってなのか、物語全体を包み込むような、
優しさのようなものが端々から滲み出てきているようなのです。

4巻全てを読むのに一週間もかかりませんでした。読みやすい文体
もさることながら、きちんと物語の中に謎をいくつか常にちりばめてくれていて、
読者を先へ先へと引っ張って行ってくれます。かといって、徹夜して読むような本ではありません。

これはもちろん良い意味でです。
この物語は、1文1文をじわりと胸に浸透させながら読むのがいいのかなと感じました。
そうすれば、エリンの、そして上橋菜穂子さんの想いが全身に行き渡るような感覚に陥るはずです。

獣の奏者」の他にも、上橋菜穂子さんは多数の著書を出しているので、ぜひとも
全ての上橋ワールドに浸りたいと思います。


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上橋菜穂子先生の獣の奏者の感想 [感想]

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私が上橋菜穂子先生の作品と出会ったのは、NHKで放送していた
獣の奏者エリンをたまたま見たことがきっかけでした。

すぐさま上橋菜穂子先生の世界観に引き込まれて、原作を読んでみたいと思いました。
上橋さんの作品は映像が容易に浮かぶような文章なので、読んでいて
全く飽きることがありません。

そして、獣の奏者や他の作品に共通するのが、何処の国なのか、
日本っぽいけどそうでもなくて、オリジナリティがある言葉だったり道具だったりが、
とても不思議で、ファンタジーなのです。


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獣の奏者は、エリンという女の子が自分の運命というか宿命というか、
そういうものに翻弄されながらも、自分で立ち向かい、切り開いていくというような物語です。

でも、そこには人間同士の愛や、生き物との絆もあれば、憎しみとか裏切りとか
人間のドロドロした部分も描かれています。

児童文学という位置づけなのですが、大人でも楽しめる、ほんとにおもしろい作品です。
どんな経験をすればこんなファンタジーをかけるのか、ほんとに尊敬です。

上橋菜穂子先生の生い立ちが書かれた本も読みました。子供の頃は
夏休みは田舎で過ごしたとか、オーストラリアの先住民との交流とか
バックボーンがとても興味深い方です。

獣の奏者はとても長い作品ですが、主人公のエリンが大きくなって結婚して、
子供を産んで、死んでいく。

彼女の人生を読んでいる私も生きることができるという、夢をのせてくれるというか、
そんな物語です。ホントに大好きな作品です。


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タグ:獣の奏者
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上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ」について [守り人シリーズ]

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上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ」が大好きです。
私が上橋菜穂子さんを知ったのは、当時小学生だった娘が、上橋さんの「獣の奏者」に
ハマったのがきっかけです。

とても面白いから是非読んでみて、と半ば強引に薦められました。
小学生の読む本だからと軽い気持ちで読み始めたところ、面白くて
一気に読破。 他にも作品はないのかしら?

と探してみたところ「守り人シリーズ」をみつけました。
とても人気がある作品で、図書館では予約が必要なほど。


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精霊の守り人」から「「炎路を行く者」まで、 予約して本が回ってくるのを
待ちながら読んだので、 一気にとはいきませんでしたが本当に楽しく読みました。

主人公「バルサ」と一緒に旅をしているような気持ちになりながら、上橋菜穂子さん
の独特の世界観を味わい他の登場人物との関係や舞台となる国それぞれの
魅力を堪能し、本当に至福の時間でした。

こんなに多彩な物語を紡ぐ上橋菜穂子さんとはいったいどんな人なのでしょう?
お写真を拝見すると、穏やかでにこやかなご婦人で、この方のどこに
あんな激しいく美しく心を揺さぶるようなお話の素が入っているのかしら?
と不思議に思うほどです。

守り人シリーズ」は結局全巻買い揃えてしまいました。
古い作品も含めて読める作品は全部読んでしまいましたが、「鹿の王」は
図書館で順番待ちです。 早く読みたいので、待ちきれずに買ってしまうかもしれません。


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上橋菜穂子 著書 守り人シリーズの感想 [守り人シリーズ]

上橋菜穂子さん「守り人シリーズ」について
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日本には三大なんとか~と称して並び立てる習性がありますよね。
日本三景とか三種の神器とか…。日本のファンタジー作家にもこのような
三大○○にあてはめられる作家さんがいらっしゃいます。

それがまず、「守り人シリーズ」で有名な上橋菜穂子さん。次に「勾玉三部作」で名を馳せた荻原規子さん。
そして三人目は「十二国記」と言えば誰でも知っているであろう小野不由美さん…。
と私は思っていますが、やはり世間では上橋さんと荻原さんのお二人が断然に強いようです。

というか、三人目としてどなたか挙げようとするとたくさん候補が出てくるのです。たとえば、神話ファンタジー巨匠たつみや章さんはどうなる?…とかね。議論を始めると尽きなさそうなので、とりあえず上橋さんと荻原さんのお二人に焦点をあてます。基本的には上橋菜穂子さん著書の「守り人シリーズ」のご紹介という観点で、荻原規子さんの作品と比較する形で進めます。

まず上橋菜穂子さんの作家としての土台には、大学で「文化人類学」を専攻していた事が大きく根付いています。私も大学で少しかじりましたが、一言で表現すると「土着」です。「土くさい」です。決してこれは批判的な意味で仕様する表現ではなく、これしか私の頭の中にある語録で言語化できないのです。
ごめんなさい…ボキャブラリー貧相で(汗)民族的というか、生活臭にあふれているというか…
上橋さんの「守り人シリーズ」の中には、舞台となる世界の細やかな設定が、本当に緻密なのです。

しかも、それがオリジナルに根底から設計されています。また、この世界に出てくる食べ物や衣服などの名前もユニークです。たとえば、ガシャ〈芋〉、ラガ〈チーズ〉、ハチャル〈キノコ〉、カッル〈マント〉など…たくさんの国の土着の文化を学んできたからこその発想力なのでしょう。また、人々がその土地でどのように暮らしているかの土くさいところまで詳細に描かれています。

ここまでを荻原規子さんの作品の比較してみます。荻原さんは教育学部の国文科を出ておられます。そのため作品全体が上品というか…とても日本語が美しいんですね。ひとつの情景描写をとっても、それだけで詩的というか…言葉の使い方がうまいんです

有名な勾玉三部作は主に「古事記」「ヤマトタケル伝説」「日本書紀」あたりの神話をモチーフにしているため、上橋さんの作品にあるような泥くさい民の生き様…みたいなのは少ないように感じます。天上人の、天上人による、天上人のためのファンタジー…みたいな?

もはや言っている意味が分からなくなってきましたが(笑)宮殿のきらびやかさ。登場人物の所作、身につけている装束、心の揺れ動き、景色の変化などの描写がワンパターンでなく、本当に色々な語彙で我々を魅了します。誰かが死ぬシーンですら絵画的です。

誤解のないように断っておきます。どちらが勝っている、とかの論点ではありません。どちらも良いのです。金子みすゞじゃありませんが。どちらも違っていて、どちらも良いのです。

上橋さんの「守り人シリーズ」には一作一作にテーマが設けられているように感じます。シリーズ全体の根っこの部分に、陳腐な言葉で言ってしまえば「生きる意味」だとか「成長」という大きなテーマがある気がしますが、一作ずつに地を這うようにして生きる私たち人間へのメッセージがあるんです。それがどんなものなのかはご自身で読んで感じて頂きたいです。

反して、荻原さんの作品を読んだあとに残るのは、ひたすら甘美でロマンチックな感覚です。あぁ人間が生み出す作品ってこんなに美しいんだなぁ、と。わかりやすく例えると、荻原規子さんは「クラシックバレエ」、上橋菜穂子さんは「モダンバレエ」。荻原規子さんは「たおやめぶり」、上橋菜穂子さんは「ますらおぶり」。
荻原規子さんは「貴族的」、上橋菜穂子さんは「民族的」。少し語弊がある表現もあるかもしれませんが、こんな感じです。繰り返しますが、どっちが良いとか好きとかじゃないんです。


ただ、これから「守り人シリーズ」を読む方がいらっしゃるなら、きっと生きるパワーのようなものを感じるはずです。人間の「生き抜いてやる!」という意志のようなものがみなぎっています。
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